新聞記事のタカ


 5月25日、釧路新聞の紙面に、釧路市内の市街地で中型の猛禽類が確認されたとの記事が載っていました。共に掲載されていた写真には、やや色白な若いオオタカの姿が映っていました。
見覚えがある姿


 その日の昼頃、新聞で紹介されていた場所の近くで、一羽のオオタカが保護され、センターに運び込まれてきました。身体の特徴から、記事で取り上げられていたタカと思われました。
大きな怪我は無いものの


 保護された方の話によると、カラスに襲われていたとのこと。幸い大きな外傷は無かったものの、栄養失調と脱水に陥っていました。長い間十分に餌を捕ることが出来ず、体力が落ちてしまったものと思われました。
姿をさらさずに観察


 補液と栄養補給を行った後、広めの入院室に入れ、数日間無人カメラを使って遠隔的に行動の観察を行いました。枝移りや飛翔、餌捕りの能力に大きな衰えが見られなかったことから、体力が戻り次第野生に返すことにしました。
緑濃くなった湿原の林に


 野生復帰にはもってこいの穏やかな快晴の日。すっかり緑色に衣替えした釧路湿原は、夏鳥達の囀りで賑わっています。  標識用の足環をつけたオオタカをそっと草原に立たせると、地面を勢いよく蹴って力強く飛び立ちました。
 

頂点ゆえの厳しさ


 灌木の間をくぐり抜け、若いオオタカは吸い込まれるように湿原の林に消えてゆきました。
 秋から春先にかけ、センターには若いタカが何羽も餌を捕れずに運び込まれます。生態系の頂点で生活する彼らにとって、豊かな自然環境の存在は、まさに命綱といえるのです。