小さいけれど、猛禽


 5月下旬。ハトよりも小さなタカ、ツミが保護されました。何かに衝突したらしく、左の翼に力が入りません。翼裏の皮膚に小さな穴が空いており、周辺の羽毛に血液がこびりついています。よく見ると裂傷から骨の断端が見え隠れしていました。
上腕骨が真っ二つ!


 レントゲンを撮ってみると、左の上腕骨(写真では、右側の翼の根本。矢印の部分)が真っ二つに折れていました。事故直後は出血もひどかったらしく、血液の濃度が正常値の半分以下にまで下がっていました。
手術は道具作りから


 治療には手術が必要ですが、鳥の身体が小さいため、適切な太さや硬さの髄内ピン(骨を接ぐためのピン)が存在しません。このため、特殊な注射針を改良して、この鳥にあったピンを作成し、ガス麻酔を施しながら翼を元の形に整復しました。
翼をしっかりと固定


 鳥の骨は竹筒のように中空になっており、中にピンを入れただけでは折れた骨が安定しません。このため、特殊な髄内ピンとギプスを一体化させ、翼をしっかりと固定しました。ようやく翼が正し位置に戻り、身体への負担がだいぶ軽くなったようです。
リハビリ開始!


 手術から約3週間。レントゲンで骨がしっかり付いたことを確認し、ギプスと骨のピンを取り除きました。複数の止まり木を計画的に配置した入院室の中で、枝移りをしながらのリハビリを開始。翼もきれいなV字型に開くようになってきました。
  取り戻した飛翔力


 6月下旬。再び飛翔力を取り戻したツミ。狭い入院室の中でも器用に方向転換できるところは、さすが敏捷な小鳥類を狩って生活しているタカです。野生に帰るまでには、まだまだトレーニングが必要ですが、少し明るい兆しが見えてきたようです。