オジロワシの巣立ち雛


 8月中旬、オジロワシの巣立ち雛(ヒナ)が保護されました。猛禽類のヒナは巣立った後もしばらく親から餌をもらって育ちますが、今回保護された雛は何らかの理由で親からの支援を受けられず餓死寸前の状態でした。はぐれてしまったのか、見捨てられたのか...
赤ちゃんでも力は強い


 収容された鳥が重要な感染症にかかっていないことを確かめるため、口の中の粘液を採取して検査します。オジロワシやシマフクロウなど大型猛禽類のヒナは、比較的おとなしいのですが、脚や翼の力がとても強いため、診療は通常二人体制で行います。
飲まず食わずに何日も...?


 血液検査で極めて重度の貧血と脱水、低蛋白が認められ、何日も飲まず食わずだったと推察されました。まだ十分に飛ぶ力も無く、自分で餌を捕ることができない幼鳥は、親が餌を運んでくるのを来る日も来る日もじっと待っていたのでしょう。ただちに輸液による治療が開始されました。
口の中を診せてね


 口の中に真菌の感染が認められました。通常、体力のある鳥に対しては健康上大きな影響を及ぼさない常在菌なのですが、今回の幼鳥のように衰弱してくると感染が拡大し、炎症などを引き起こします。口腔内の消毒と飲み薬を与えて治療を試みます。あとはヒナに残っている体力と気力が勝負です。
広いケージに引っ越し


 一般状態と感染症に改善が見られたので、入院室から広いリハビリケージに引っ越しました。高いところを好むオジロワシですが、まだ奥の止まり木までは羽ばたいて行けません。それでも、地上よりわずかに高い、切り株に飛び乗った姿はやっぱり猛禽類。
  顔つきも凛々しくなり


 顔つきも日に日に凛々しくなってきました。警戒心がほとんど無いのが幼鳥の特徴ですが、これからは人間に馴れさせないように飼育し、厳しい野生で生き抜くための本能を呼び覚まさなくてはなりません。親離れ(?)の季節はもうすぐ。寂しくもあり、嬉しくもあり。。。
 
   
  より高く、より強く


 収容時はほとんど飛ぶことが出来なかったオジロワシの幼鳥。毎日少しずつ飛ぶ練習を繰り返し、羽ばたきに力強さが感じられるようになってきました。低空飛行ながらも飛行距離を10m・・・20mと伸ばし、今日は40mケージの端から端までを飛ぶことが出来ました。
 
   
  目標があれば


 幼鳥は感電事故で収容された大人のオジロワシと同居していますが、親だと勘違いしているのかしきりに後を追おうとします。頭上の成鳥を見上げ、ピーピーと悲しげに鳴く日が続きましたが。。。今日は意を決して、一番高い止まり木目指してテイクオフ!
 
   
  仲良く同じ枝に


 大きな翼を懸命に羽ばたかせ、とうとう成鳥と同じ枝にとまることが出来ました。近づいてきた幼いワシに対し、大人のワシはとくに嫌がる様子もなく、温かく迎え入れているように感じられました。別々の原因で保護された2羽のワシが、同じケージの中でお互いを意識しながらリハビリに励むことは、鳥が人間に馴れてしまう事を避ける上でも好ましいことです。
 
   
  ちょっと自慢げ?


 高い枝に登った幼鳥。私達を見下ろす顔つきは、どこか少し自慢げに見えませんか?
 どんなに大きなケージでも、自然界の広大さに比べれば、ほんの僅かな空間に過ぎません。よく食べ、よく運動し、大空を自由に飛び回る日を夢見て頑張ってもらいたいものです。